2012年4月13日金曜日

赤ツメ草 (4/3 作者:エイコさん朗読)

赤ツメ草の蜜を 額に垂らされた

現で見た夢の中、赤ツメ草が 額に蜜を注ぎ落としてくれた

黄金色の蜜が額の内側に染み入ってゆく



強くなりたい

ひとりでずっくりと どっしりと立っている楠木の大木のように強くなりたい

ずっとそう望んでいた

でも わたしにはそんな強さはない

そんなキャラじゃない

ああ でも

楠木のような強さが欲しい ずっと ずっとそう願っていた

そんなとき、赤ツメ草が額に注ぎ垂らしてくれた蜜



幼いころ 牧草畑にたくさん咲いていた薄赤紫の花

花びらをちぎっては 甘い蜜をすすった赤ツメ草の花

彼らがわたしの額にくれた蜜は、なんだったのか

彼らは 何をわたしに伝えてくれたのか



次の季節がやってきた

大都会から電車とバスを乗り継ぎ 田植えの手伝いをしにいく

初めて行った のどかな村

田んぼのとなりには一面の赤ツメ草たちがいた

さわさわと風に揺られながら一斉に咲き誇っている

ぷききき くふふふ みんなで笑い合いながら咲き誇っている



ああ、そういうことだったんだね!

たくさんたくさんの花を咲かせる赤ツメ草

ひとつの株にたくさんの花をつけ、

おとなりの株と、そのおとなりの株と、そのまたおとなりの株たちと

延々と みんな 地面の下の根っこでつながっている

そしてみんなで さやさやと 笑いながら風にそよいでいる



うす赤紫のじゅうたんとなった地面は どっしりと 強かった



楠木のようにどっしりとした強さがある

赤ツメ草のような どっしりとした強さも ある



赤ツメ草たちは、ひとりで咲いていても つまらない

たくさんの仲間たちと一緒に咲くこと

それが うれしく 楽しく しあわせ

みんな 根っこでつながっている

そしてみんなで 土に どっしりと 生きる



強く生きる

わたしにも手に入れることのできる強さを、

うす赤紫の花が 額に蜜を垂らして教えてくれた

ひとりで咲いても つまらない

みんなで 咲くことのよろこびを分かち合うことのできるよろこび

みんなと根っこでつながっていることを信じることのできるよろこび



そのよろこびは きっと つよさだ



わたしは 土の下で 根っこをのばす

もっともっと のばす ひろがる のみこむ 土のなかを突き進む

そして土の上に種を落とそう

このヨロコビを分かち合う仲間を 増殖させるために

うす赤紫のヨロコビを 増殖させていくために








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